東京都は巨大な組織で、企業でいえば超多角化経営をしている事業体です。東京都の5000を超える事業を実行しているのは都の職員であり、都知事や都議会議員ではありません。また知事や議員は4年ごとに交代ですが、職員は原則として定年まで40年以上継続して勤務するのですから、都政の継続性に対する責任と役割が、選挙で選ばれる私たちとは性質が全く違います。
安定した都政運営にとって、優秀な人材を職員として採用し、その職員が高い使命感を持って職務を全うすることが非常に重要です。
そこで、東京都の職員の採用で、どの部署にどの職種で何人を配置するのかということについて、総務局人事部に対する事務事業質疑で伺いました。
目次(クリックで各項目へジャンプします)
都職員の採用と人員配置について
12月4日には都庁で働く魅力を伝える「都庁セミナー」が開催され、来年度の新卒採用やキャリア採用に向けた動きが活発になっています。
まず始めに
Q1 人員、採用についての計画は、誰が、いつ、どのようにして作成し決定しているのか。また、最終的な各局の職員定数と採用の人数は誰が、いつ、どのようにして決定されていくのか、伺う。
A1(髙﨑人事部長答弁)
・ 都では、効率的に事業を実施するため、毎年度、人員や組織を精査し、職員定数を定め、各事業の基本的な執行体制を整備
・ 知事部局等に関しては、例年9月頃に総務局が、各局から人員要求を受け、事業動向や個々の職務内容、業務量などを確認して適切な規模となるように調整し、知事の了承を経て、1月に予算案と合わせて、翌年度の職員定数案を公表
・ 職員の採用数について、人事委員会が採用試験を実施する職種においては、翌年度の職員定数案をベースに、今後の事業動向に係る見込みを調査し、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案し、翌々年度の予定者数を2月中旬までに知事の了承を得ている。
職員定数については秋ごろから翌年度のものを要望するとのこと。予算要望のプロセスとほぼ重なるとのことでした。
一方で、採用については1月頃に翌年度の職員定数をもとに、翌々年に向けた採用予定者数を2月までに決定するということで、1年以上先の状況を予測して採用計画を立てる必要があるということであります。
Q2 近年の採用において、各職種別に適切な人材を採用できているのか伺う
A2(髙﨑人事部長答弁)
・ 職員の採用に当たっては、地方公務員法に定める成績主義に基づき、採用後に従事する職務内容等に応じた適切な能力実証を実施
・ 具体的には、人事委員会が実施する試験等において、事務や土木など、その職務に求められる能力水準等に応じて、出題の範囲やレベルを設定して、職種ごとに試験等を実施
・ その上で、例えば大学院卒程度の能力実証を行うⅠ類A採用試験における職種「事務」では、令和3年度は、採用予定者数20名に対し、772名の申し込みがあり、競争試験を経て、採用予定者数を上回る24名の最終合格者を出すなど、各職種別に適切な能力実証を経た上で、必要な人材の確保に努めている。
各職種ごとの選考状況を確認しましたが、全ての職種において採用予定に応募が満たないということはなく、採用倍率(受験者数に対する最終合格者)はほとんどの職種で1.5〜10倍となっていることが確認できています。
その中でも事務職は、I類A、I類B、それぞれ採用試験がありますが、全職種の中で最も人数が多い職種であります。同時に受験者数も多いため、全職種の中でも最も倍率の高い職種が事務職となっています。
人事委員会の意見によると、都政の構造改革を一層進めるためには、様々な経験や専門性を持つ人材を取りこみ、組織の多様性を高めることが不可欠としている。また、
Q3 シントセイを掲げ、DXを進める上で職員の働き方や業務の内容、求められる役割なども変化すると考えるが、人員計画にはどのように反映されていくのか伺う
A3(髙﨑人事部長答弁)
・ DXを進めることで、職員がより政策のイノベーションを生み出す業務に携わり、多様化、複雑化する行政ニーズへ対応する組織へ変革していくことは重要
・ 具体的には、例えば、主税局において、滞納者の財産調査業務のうち、預貯金照会に係る部分をデジタルツールの活用により電子化し、業務を効率化することで、職員のマンパワーを別の業務にシフトしたことが挙げられる。
・ こうした内容は、各局との組織定数の調整を踏まえて人員計画に反映されるものであり、引き続き、都の事業執行に必要な人員を確保するとともに、業務内容の変化に対応した人材育成や活用を行っていく。
主税局での取り組み事例のように、会計や経理の分野では、デジタルツールを利用しないで仕事をするというのは、世間のスタンダードから考えても、取り入れていくのが当然であると考える。
各局において、DXによる事務の業務効率化をスピード感を持って徹底して進めていただくはずなので、その点が適切に人員計画に反映されているのか、人事部としてもチェックしながら人員配置の最適化を図っていただきたい。
都政のDXを進めるICT職について
Q4 各局から上がってくる職種別人員配置の要望の中に、新たな役割であるICT職への要望は入っているのか伺う
A4(髙﨑人事部長答弁)
・ 令和3年度より採用が開始されたICT職についても、各局の組織及び定数計画の対象
・ ICT職の活用については、本年8月に通知した、令和4年度組織及び定数計画の策定方針において、各局に対し、局事業のDXを強力に推進するため、ICT職の設置について、積極的に検討するよう示しており、現在調整中である。
ICT職を積極的に設置するように全庁的に促しているということは確認できました。
調整中ということは、R4年度の要望としては、恐らく複数の局からICT職の設置要望が上がっていると私は理解しますが、
Q5部課ごとにDXに対する積極度は異なるため、本来DXが必要な場所にはICT職を適切に配置されるようすべきと考える。人事部として、どのようにと取り組んでいくのか伺う
A5(髙﨑人事部長答弁)
・ 先述のとおり、各局からDⅩ推進のための人員要求があることに加えて、施策の実施段階においてDXの活用が急遽必要になる事業も生じており、全庁のICT職の需要について、的確に対応していくことが必要
・ そのため、これまでもDX推進を主導するデジタルサービス局とも連携し、一定の資格や経験を有する事務職員のICT職への転職などICT人材の裾野を広げる取組を強化
・ また、年度途中で、ICT職の任期付職員を採用するなど柔軟に対応
・ 引き続き、デジタルサービス局と綿密に連携し、各局のDXの浸透・展開の状況を踏まえて、適切にICT人材を確保するように努めていく。
事務職員をICT職へ転職させる、また年度途中でも必要に応じて柔軟な採用ができるとのことでした。今後数年間はシントセイの実現にむけて、業務内容も著しく変化していくと考える。その変化にしっかり対応できるよう柔軟な人員配置の変更、職種変更など、できるように取り組んでいただきたい。
障がい者雇用について
都民ファーストの会東京都議団として、ダイバーシティの推進には格段の思い入れがある。
その一つとして、障害の有無に関わらず、誰もがいきいきと活躍できる社会を目指しているところである。
【障害者Ⅲ類選考の実施状況】
都においても率先して障害者雇用に取り組むことが重要であると考えます。そこで
Q6 障害者を対象とするⅢ類採用選考の実施状況について、障害種別ごとに伺う。
A1 (人事部長答弁骨子)
・ 障害者Ⅲ類採用選考については、平成29年度選考から、従来の身体障害者に加え、精神障害者、知的障害者に対象を拡大
・ それ以降4年間で、精神障害者116名、身体障害者57名が合格
・ こうした結果、昨年の知事部局の障害者雇用率は、法定雇用率を上回る2.81%
○ 障害者Ⅲ類選考では、精神障害者と身体障害者の採用実績があることがわかった。一方、知的障害者の方は、平成29年度選考から受験可能となったが、これまで合格者が出ていないということもわかった。
【知的障害者雇用の取組】
○ こうした中にあっても、都は、民間企業に対し障害者の雇用を促進する立場であることを踏まえれば、精神障害者と身体障害者に加えて、知的障害者の雇用により一層積極的に取り組むことが重要である。
Q7 都においては、知的障害者の雇用について、どのように取り組んでいるのか伺う。
A7(人事部長答弁骨子)
・ 知的障害者の雇用については、平成30年度から、非常勤職員であるオフィスサポーターの任用を開始し、現在11名を任用
・ また、昨年度、非常勤職員から常勤職員へステップアップすることが可能な雇用の枠組みを創設し、今年度から常勤職員4名を任用
・ 今後とも、個々の障害特性を踏まえた職域の開拓や、きめ細かな職場環境の整備などをより一層進め、知的障害者の活躍の場を拡大
○ いままでの枠組みでは、雇用が難しかった知的障害の方へも常勤職員へステップアップできる雇用の枠組みを創設したことは評価。
【特別支援学校等からの実習受入れ実績】
○ オフィスサポーターの職場であるオフィスサポートセンターでは、特別支援学校の実習生を受け入れていると聞いている。
Q8 これまでの特別支援学校からの実習受入れ状況について伺う。
A8(人事部長答弁骨子)
・ オフィスサポートセンターでは、平成30年度に開設して以降、特別支援学校からの実習生を受け入れ
・ 受入れ実績は、都内特別支援学校5校から、平成30年度は延べ11名、令和元年度は延べ15名、令和2年度は延べ19名であり、期間は概ね1週間から3週間
・ 今後も、職場実習の受入れを進め、生徒の社会参加や自立へつなげていく
○ 特別支援学校の生徒が実際の職場での体験を通して、働くことへの意欲を高めたり、不安を解消することができるよう、ぜひ工夫しながら取り組んで欲しい。
○ 職員の採用に当たっては、「地方公務員法に定める成績主義に基づき、採用後に従事する職務内容等に応じた適切な能力実証を実施」ということであるため、都としては障害特性を踏まえた業務の切り出しが重要な要素になる。
○ 民間においては、AIやロボット等の先端技術を活用することで重い障害を持つ方でも就労できる仕組みに取り組んでいる。都においても、都の障害者雇用でも応用できることはないか、動向をよく注目しつつ、積極果敢に障害者雇用に取り組んで欲しい。
氷河期世代の採用について
就職氷河期世代を対象とした採用試験は、先週1次試験の合格発表がされたところでありますが、
令和元年第4回定例議会において、我が会派の中山議員の一般質問を受け、その翌年から開始した試験制度であり、今まで2年間取り組んできたところである。
Q9 まず、就職氷河期世代の採用試験について、工夫している点、他の採用区分と比較してどのような特徴があるのか、伺う。
A9(人事部長答弁骨子)
・ 都では、誰もがいきいきと活躍できる東京の実現を目指すため、令和2年度から、就職氷河期世代を対象とした職員採用試験を実施
・ 当該採用試験では、高校卒業程度と大学卒業程度の複数の試験区分を設定することにより、様々な学歴・経歴などを有する方々の受験が可能
・ また、受験資格については、一般の高校卒業程度では18歳から21歳までの方を、大学卒業程度では22歳から29歳までの方を対象としているが、令和3年度の就職氷河期世代を対象とした採用試験では、両区分とも、36歳から51歳までを年齢要件として選考を実施
○ 試験区分を複数設けていることや、一般の区分と異なる年齢要件を設定していることが分かった。
【今後の取組について】
○ 人事委員会が公表している採用試験の申込状況をみると、氷河期世代を対象とした採用試験の申込倍率は、令和2年の150倍ほどではないが、令和3年も90倍近くと非常に高い倍率になっている。
採用人数を大幅に増やしていくことは難しいと思うが、氷河期世代の方々の安定的な就労に向けた工夫が必要と考える。そこで、
Q10 氷河期採用試験のこれまでの取組と、氷河期世代の方々の安定的な就労に向け、都としてどのように取り組んでいるのか、見解を伺う。
A10(人事部長答弁骨子)
・ 就職氷河期世代を対象とした採用試験の採用予定者数は、職員の退職動向や職員定数の状況等を勘案して設定
・ 令和2年度の採用試験では、高校卒業程度と大学卒業程度を合わせて、23名が合格。また、令和3年度についても採用予定者数を20名に設定し、現在、選考手続を進めている
・ 加えて、都庁における就労経験などを通じて、民間企業等への正規雇用での就労を目指す取組として、非常勤職員の採用選考も実施しており、令和2年度は10名、令和3年度は11名が合格
・ 常勤職員と非常勤職員との二つの採用を実施し、公務職場を活用することを通じて、就職氷河期世代の方の安定的な就労に取り組んでいる
都の常勤職員としての採用と、非常勤職員を経験した上で民間企業などでの正規雇用を目指す方法も取り組んでいるということ。
産業労働局でも、就職氷河期世代キャリア・チャレンジでは、派遣から正社員を目指す取り組みとして進めてきたところであり、連携して就職氷河期世代への支援を確実に進めていただくよう要望し質問を終わります。