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新たな時代のニーズに対応するためのシニアの再活躍応援
次に、セカンドキャリアを始めるシニアへの支援について伺います。我が国では、総人口が減少する中で、65歳以上のシニアの人口は3627万人と年々上昇しています。また、就業者に占めるシニアの割合(13.5%)も過去最高となっています。
少子高齢化が進展する中で、経験や知見を有するシニアが、セカンドキャリアにおいて円滑に適応し、 即戦力として活躍できることは、不足する中小企業の人材確保の観点からも重要です。
こうしたニーズに対応するために、都はこれまで、定年後のシニアが就業や起業、NPOやボランティア等の選択肢も含めてそれぞれのセカンドキャリアを描く半年間の講座を開講し、新たな挑戦を後押ししてきました。
Q7来年度、都は、こうした取組に加え、就職を希望するシニアを対象に、短期集中プログラムを予定しているとのことですが、短期集中型のプログラムとした理由と事業の具体的な内容について伺います。
A7(雇用就業部長答弁)
○ 都は、来年度、大企業などで新たな事業展開の知識や経験を身に付けたシニア人材が、中小企業で円滑に実力を発揮する手法を学び就職できるよう後押しする事業を開始する。
〇 本事業は、早期の再就職を目指すシニアのニーズに対応することを目的としており、就職後に即戦力として活躍するためのノウハウを短期間で修得する講座としている。
○ 具体的には、これまでの知識や経験を中小企業の職場で活かすために、期待される役割や円滑なコミュニケーションスキル等を5日間で集中的に取り組むセミナーを開く。これに併せ、就職を実現したシニアや経営者との意見交換の場を設け、新たな職場で働く気持ちの切替えを促す。
〇 こうした取組を年6回、計120名の規模で実施し、きめの細かい支援により、企業とのマッチングにつなげていく。
〇 これらにより、シニアの就労を推進する。
女性のキャリアチェンジに向けた支援
12月の第4回定例会の私の一般質問に対して、「非正規雇用で働く女性等が、身近な地域で正規雇用や自分に合った働き方に繋がる様々な知識や情報を得るセミナーや相談の機会をこれまでよりも増やし、職業訓練をeラーニングにより効果的に提供しながら、専門家が適切な助言を行う支援に併せ、就職の後押しも一体で進める新たな取組を検討し、仕事の選択の幅を広げる」と知事より答弁いただいた。
Q8(非正規雇用で働く女性のキャリアチェンジや再就職を目指す女性にむけた能力開発や就職活動を支援する、キャリアカウンセリングやeラーニング等の具体的な取り組み内容について伺う。
A8(雇用就業部長答弁)
〇 都は来年度、女性がキャリアチェンジに向け必要となるスキル等を身に付け、希望に応じて正社員等で働けるよう、女性の再就職に向けた支援を充実する。
○ 具体的には、育児中の方等に向けて、都内各地で就職活動のノウハウを学ぶセミナーと個別相談会をセットで行うイベントを、年間50回から83回に拡充する。
○ また、非正規等から正規雇用での就職を目指す女性が幅広い職業を選択できるよう、eラーニングによる様々な講座や受講者同士の交流の場を提供するなど、能力開発と就職支援を一体的に行う事業を500人規模で新たに開始する。
○ こうした取組に加え、しごとセンターにおいて、専任のカウンセラーが個別にフォローアップを行う。
いわゆる「年収の壁」について
本定例会の我が会派の代表質問においても質疑をさせていただいているが、現在、非正規やパートタイムで働く女性などの就業や活躍を阻害している要因の一つとして、年収で103万円、130万円などを壁とする、いわゆる「年収の壁」が指摘されている。
実態として、パートタイムで勤務しているほとんどの女性が社会保険料の発生しないよう収入を調整している。具体的には、年末になるとシフトに入らないという働く時間を減らすという方法をとっている。企業側がせっかく時給を上げても、働く時間は減ることになるので逆効果になっているということ。
本来は国の制度改正で解決するべき課題だが、都としては、年収の壁の手前で止まる
ことが、見方によってはメリットではなく、デメリットでもある、という気づきを促すことも重要だと考える。つまり「年収の壁」を受け入れ、働くことを控えるということは、将来に向けた収入増や自身のキャリアアップとは逆行する行動だことを認識してもらうことが必要。
「年収の壁」に対して、自分の人生計画の中で最適な選択をするために、税や社会保障の理解を促す取組も進めていくことも喫緊の課題。
Q9都は、こうした「年収の壁」がもたらす弊害を解消し、働く方の意欲を醸成させていくことが重要と考えるが、来年度の都の取組を伺う。
A9(事業推進担当部長答弁)
○ 都は来年度、従業員が、税や社会保障などに関するより正確な知識を基に、それぞれに最適な働き方を選択し、所得の確保の実現につなげるための取組を開始する。
〇 具体的には、こうした税制や社会保険制度などの情報を提供するオンラインセミナーを年3回実施し、企業や従業員への理解を促していく。
○ また、単年度の年収の多寡により従業員が労働時間を調整している企業などに専門家を派遣し、講習会や個別相談会を通じて労働時間と所得の関係を十分に説明するとともに、より多くの時間働く場合のメリットや、今後のキャリア形成などについてきめ細かくアドバイスしていく。
○ こうした取組により、多様な人材が活躍する職場づくりを後押ししていく。
結婚・妊娠・出産・育児、ライフステージに応じたサポート
結婚・妊娠・出産・育児等の様々なライフステージに応じて、仕事との両立を実現できる職場環境の整備が急務となっています。
令和5年度予算では、結婚から子育てまでの「ライフステージに応じたトータルサポートを展開」として、様々な支援の充実が掲げられています。
ライフステージの充実には、従業員が安心して働ける環境を整備することが必要であり、都内雇用の約4割を担う中小企業が生産性の向上を図るとともに、非正規雇用者をはじめとする従業員の処遇改善を推し進め、賃金引き上げに繋げていくことが重要である。
Q10都は来年度、正規雇用等転換安定化支援事業やエンゲージメント向上に向けた職場環境づくり推進事業により、中小企業の職場環境の整備に向けた支援を強化することとしているが、来年度の予定件数について伺う。
A10(事業推進担当部長答弁)
○ 正規雇用等転換安定化支援事業は、国のキャリアアップ助成金の支援を受けた中小企業が、非正規から正規に転換した従業員の人材育成計画を作成し、メンターによる指導などを実施した際に助成を行うものであり、来年度は1,900件の規模で実施する。
○ また、エンゲージメント向上に向けた職場環境づくり推進事業は、会社の生産性と従業員の意欲を高めるため、多様な勤務制度の導入のほか、賃金の引き上げを行う事業者に奨励金を支給するものであり、来年度は1,200件の規模で実施する。
それぞれの事業の予定件数がわかりました。
Q11都は来年度より、これらの事業において、子供を安心して生み育てられる環境整備に取り組むこととしているが、その支援内容を伺う。
A2(事業推進担当部長答弁)
○ 都は来年度より、正規雇用等転換安定化支援事業において、新たに結婚休暇や小学校在学中も取得できる看護休暇の導入のほか、産前産後休暇の充実などに取り組む事業者への助成を開始する。
〇 また、エンゲージメント向上に向けた職場環境づくり推進事業では、短時間正社員制度や、子供の誕生日や学校行事に出席する際に取得できる休暇制度の導入のほか、育業を取得した従業員の周囲の社員を支援する制度などの取組も奨励金の対象に追加する。
〇 これらにより、子育てと仕事が両立できる職場環境の整備を後押ししていく。
今の答弁から、充実した支援内容であることがわかりました。
Q12こうした支援策を中小企業に積極的に利用してもらうことが、環境整備を進める上で重要です。
そのためには、広報を工夫する必要がありますが、都は、どのように広報に取り組んでいくのか伺う。
A12(事業推進担当部長答弁)
○ 都は、正規雇用等転換安定化支援事業について、国のキャリアアップ助成金の支援を受ける企業に向けてリーフレットを直接送付するほか、区市町村やハローワーク、社会保険労務士会等にリーフレットを配布して事業を着実にPRしていく。
〇 また、エンゲージメント向上に向けた職場環境づくり推進事業については、専用ウェブサイトやSNSを活用して幅広く事業を周知するほか、トレインチャンネルの活用や、都内中小企業へのチラシ送付などにより、きめ細かく広報を行っていく。
都の広報の取組がよくわかりました。今後も、これらの事業が多くの中小企業に活用されることを期待して次の質問に移る。
男性の育児休業
Q13(従業員のライフステージに応じた支援として欠かせないのが、育児休業です。
とりわけ男性の育業の推進が重要ですが取組を伺う。
A13(事業推進担当部長答弁)
〇 都は、男性の育業を推進する企業の取組を積極的に発信するとともに、企業に対し育業に係る助言を行う専門家の派遣や育業中の従業員の代わりとなる人材確保の経費への支援等を行っている。
〇 来年度は、2名以上の男性の従業員が1か月以上の期間育業をした企業に対し、最大170万円の奨励金を支給する制度を新たに開始する。
〇 この取組により、男性の育業を一層後押ししていく。
アンコンシャスバイヤスと働き方改革
一方で「男性は仕事、女性は子育て」といったアンコンシャスバイアスはまだまだ存在します。そのような偏見を払拭し、育児休業を取得しやすい職場の雰囲気を作ることも重要です。また、日本は諸外国に比べ労働生産性が低いことが長時間労働につながり、子供を産み育てる余裕がなくなっているという見解もあります。長時間労働を是とする、昭和時代の働き方は見直すべき時がきています。
Q14社会全体で働き方そのものを見直す機運を高めていくことが必要と考えますが、見解を伺う。
A14(事業推進担当部長答弁)
〇 男性が育業しやすい環境づくりを進めるためには、企業への支援とあわせて、社会全体で働き方そのものを見直す機運を高めていくことが必要である。
〇 都はこれまで、ライフ・ワーク・バランスEXPOや都の専用ウェブサイトなど、さまざまな場面で、長時間労働の見直しや柔軟な勤務形態の導入に関する先進事例等を紹介している。
〇 来年度は、仕事との両立に関するポータルサイトによる発信を充実させ、従業員の出産や子育てなどのライフイベントを支援する企業の特色ある取組の紹介を増やしていく。
〇 こうした取組みを多面的に展開し、男性の育業の取得や働き方改革を着実に進めていく。
リスキリングの環境整備
DXやGXにより産業構造の転換が加速するなか、働き手に求められる能力や スキルにも変化が生じており、個人のリスキリング意欲も高まっている。一方で、従業員100名以下の企業では約半分の企業がリスキリングに取り組めていない。
そこで、都はDXやGXを支える人材の確保・育成に向けて、幅広い世代のリスキリングの取組を支援することとしている。
Q15結婚前や育児期など個々の状況に応じ、学び直しやスキルアップに自発的に取り組めるような勤務制度などの職場環境づくりも後押しすべきですが、具体的にどのように取り組むのか、見解を伺う。
A15(事業推進担当部長答弁)
〇 企業で働く方が、生活と仕事の両立を図りながら、新しい知識やより高度なスキルを習得できるよう、職場環境面で応援することは重要であり、都は来年度、そうした企業の取組への支援を開始する。
〇 具体的には、本事業の実施に当たり、企業の労務担当者を対象に、社員のリスキリングを後押しする必要性を伝えるセミナーを開催するとともに、その内容を踏まえ、リスキリングに活用できる休暇制度や資格取得支援制度、育業中のベビーシッター利用への補助制度などを整備する場合、20万円の奨励金を支給する。
〇 また、企業の希望に応じて専門家を派遣するとともに、奨励金の支給にあたっては、整備した制度が社内で活用され実効性が確保されるよう、社内研修などを実施し社員に説明することを要件としている。
〇 これらにより、従業員のスキルアップのための環境づくりを支援していく。
リスキリングへの意欲はあっても仕事や家事育児で忙しいため時間を創るのが難しい。
リスキリングに使える休暇やベビーシッター利用補助が充実してくれば、実際にリスキリングに取り組める人が増えていくはずなので、企業の環境整備をしっかり推進して欲しい。
働く女性のライフ・キャリアプラン応援事業
また、新年度の新たな取り組みとして、我が会派の提案を受け、ライフ・キャリアプランの選択肢のひとつとして、卵子凍結に関する取り組みを進めていただいていることを高く評価する。
卵子凍結に対する正しい知識、認識は、一部の専門家や当事者以外は、まだまだこれからという段階。
社会的な適応といわれる、健康な女性に対する卵子凍結に対する正しい知識・ 認識が広まり、適切な活用が進むよう、普及啓発を行うことが重要。
また、先進的な企業の中には、従業員の福利厚生、女性のライフプランの選択肢を増やしていく取り組みの一貫として、従業員の卵子凍結にかかる費用を補助するという動きも見られる。
Q16このように、卵子凍結に係る各種制度を率先して導入し、より仕事とプライベートの両立を実現できる職場環境の整備に取り組む企業を支援していくことも重要であるが、具体的にはどのように支援するか伺う。
A16(事業推進担当部長答弁)
〇 都は来年度、企業に対し、卵子凍結の正しい知識を広めるとともに、職場環境の整備により従業員の卵子凍結の支援に取り組む会社への助成を新たに実施する。
〇 具体的には、都が開催するシンポジウムやセミナーを受講し、その内容を社内での研修に活用する場合等について、100社に対し、その費用を助成する。
○ また、従業員が卵子凍結のための通院に利用できる休暇を導入する場合、20万円を助成し、凍結や保管に係る費用への補助を行う福利厚生制度の整備等に取り組む場合は40万円を加算する。来年度は20社への支援を予定している。
〇 こうした取組により、女性が卵子凍結を選ぶことのできる職場環境の整備を進めていく。
社会適応の卵子凍結は、社会的不妊に悩むキャリア志向の女性から強い要望があったものですが、特効薬のようなものではありません。あくまでもライフプランの選択肢が一つ増えるということであり、ひとりひとりがよく考えて選択すべきものです。
東京都は晩婚化が顕著ですが、35歳を超えると妊娠しにくくなります。卵子凍結の対象も医学的に35歳までが望ましいとされています。妊娠適齢期の普及啓発や出産育児後からでもキャリアを築くことができる環境整備など、複合的な施策展開が必要です。
東京に暮らす女性特有の課題を理解して、今後もキャリアとライフイベントの両立に寄り添う支援をお願いし、私の質問を終える。