外国人起業家の資金調達支援事業 についてtwitterやネット記事でひろゆき氏が取り上げ、間違った情報が拡散されて、波紋を読んでおり、私や同僚の都議に対してご心配の声などいただいておりますので、どういった事業なのか、事実に基づき解説いたします。

私は、本事業の所管局の関連する政策企画局の関連の総務委員会で理事をしております、都議会議員のあかねがくぼ かよ子 です。

(※本文について、専門家の方からみると金融や銀行業務についての記載は気になる点がありましたらお知らせください)

多様なスタートアップ育成プロジェクト

さて、そもそも外国人起業家の資金調達支援事業 は、『未来の東京戦略2022』戦略11 スタートアップ都市・東京戦略「多様なスタートアップ育成プロジェクト」にひもづいた事業です。

『未来の東京戦略2022』(PDFダウンロード)のP81あたりです ↓

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(P81の 戦略11 スタートアップ都市・東京戦略「多様なスタートアップ育成プロジェクト」に対応)

つまり、日本人はもちろん、多様なプレイヤーの創業を都内で促すことで、東京の経済を活性化させることが目的であります。この目的に関連する事業はこれ以外にも当然ですが多数存在しており、資金調達支援事業だけでも複数あります。まず誤解を解いておきたいのは、日本人向けの融資事業はこの仕組みと同じ形で長年行っています。 → 東京都中小企業制度融資

都はスタートアップ環境整備に力をいれてきており、近年では世界的の主要都市に追いついてきているところです。

関連記事『 東京は創業支援で世界的評価が急上昇中!』『スタートアップ支援の進捗

外国人に融資するのは危険では?無担保でよいのか?

本題の外国人起業家の資金調達支援事業 に話を戻します。概要はリンク先を見てください。

もし逃げらたり、詐欺まがいの方法で融資を海外に持ち逃げされたら無担保なのに回収できないのではないか?

というご懸念があろうかと思います。

まず、審査は邦人に対してよりはるかに厳しいです。またリスクも高いので、一般の創業融資1.0%以下に対して、こちらは2.7%以下(固定金利)と金利が高いです。

対象者はかなり限定的

支援対象者の主な条件は、次に掲げる条件をいずれも満たす外国人起業家

  • 東京都(政策企画局)において、事業計画の認定を受けていること。
  • 日本国内において創業した日から5年未満であること。
  • 事業活動の制限を受けていない在留資格を有していること。
  • 東京都内に本店又は主たる事務所を置く法人の代表者であること。

3つ目の「事業活動の制限を受けていない在留資格を有していること。」によって対象者はかなり限定されます。例えば、永住資格を持っている、邦人の配偶者である、経営・管理の資格がある(東京都内に本店又は主たる事務所を置く法人の代表者であること。従業員2名雇用している等)ことが前提条件になります。

銀行が審査するからそれなりに厳しい

まず、東京都の<認定を取得>するため、何度も支援センターに通いながら、事業計画の審査をクリアする必要があります。(上図【支援の流れ】の左端)

東京都の<認定を取得>できたとしても、融資が降りるかどうかは、金融機関(きらぼし銀行、第一勧業信用組合)の判断になります。ひろゆきさんの影響で、「都民の税金を使って資金を貸す事業」だと勘違いして問い合わせされる方が多いのですが、とんでもない誤解です。通常の銀行融資が基本の仕組みで、都はリスクの一部を担うという立ち位置になります。

ですので、もし貸付資金が回収できなかった時のリスクは原則として金融機関が負うことになっています。(税金で焦げつきを補填するというのは事実誤認です。)つまり、銀行として貸付事業として成立しないような不適格な起業家に、審査を甘くして、回収できなくなるようになってしまえば、自分たちの首を締めることになります。金融庁から銀行として不適格と烙印を押されてしまうような行為ではないでしょうか。

都民の税金を使って融資するのではない

民間の金融機関(銀行)が自らリスクを負う仕組みであり、だからこそ、銀行は真剣に審査を行い、回収できるように事業の支援もして伴奏していくというものなのです。

しかしながら、日本企業、邦人に貸すよりもリスクが高いことは間違いないので、東京都としてもその分のリスクは負う(預託金を融資総額の上限1/2まで預け、止むを得ない場合は免除する)ということになっているそうです。

ちなみに、この事業の規模感は年間10件〜30件と見込んでいるとのことです。5000以上ある都事業の中では、ごく小規模なものに位置付けられております。8月18日現在、まだ1件も実行されていないとのことですので、今後の動向を見守ってまいりましょう。多くの都民に注目してもらえれば、世界の詐欺師がまぎれ込む余地はないだろうと思われます。

なぜ外国人に融資する必要があるのか?

そもそも論に戻ってしまいますが、この点は重要です。

私も以前から外国企業誘致、スタートアップ育成について都議会で本テーマを取り上げております。

外国企業誘致とは?』『 東京は創業支援で世界的評価が急上昇中!』『スタートアップ支援の進捗

しかし、外国企業や外国人起業家に対しては懐疑的なところもあります。それは、日本や東京の経済に貢献していただける質のよい企業、起業家だけにもっと限定し、厳選していくべきという考えです。一定水準以上の品質(それは日本企業、日本人よりも高いレベルを要求)の企業などでないと、わざわざ税金をかけて日本に呼び寄せる意味がないよ、ということです。

日本企業を強くすること、日本人の所得を向上させるというのがそもそも目指すところでありますが、外資企業を日本から追い出せば、日本企業が強くなるわけではありませんよね。(外資がいるせいで日本が弱体化させられている、追い出すべきだと主張される方がいらっしゃいます)

むしろ日本企業は世界と比較して生産性がかなり低く、そのため従業員の給料があがらないのです。所得水準は日系より外資がはるかに高い業界がほとんどではないでしょうか。現時点では、日本人の所得を押し上げているのは日本企業ではない外資企業なのです。

日本企業、日本人だけで鎖国していても競争力が低下し、世界の潮流においていかれます。先端技術を持つような優れた海外企業、外国人起業家から刺激を受けていくことは重要です。多様性に富んだエコシステムを東京につくっていくことで、化学反応がおこり、イノベーションが生まれていく、そんな環境づくりを目指していきたいと思います。

日本市場は少子高齢化、人口減少で縮小が必至です。海外で活躍できる起業家、スタートアップを日本から生み出すためにも、多様性に富んだスタートアップエコシステムが必要だと考えます。また都内中小企業の7割が赤字といわれており、非常に問題です。

都内の中小企業が技術革新などで生産性を向上させ、黒字化を促進していくこと、都として必死でやっていかないといけません。行政の支援が市場原理を歪めてしまい、企業の健全な新陳代謝をはばむ(ゾンビ企業を産んでしまう)ことをしていないのか、支援のあり方も見直していくすべき時かもしれません。

1つの事業に固執するだけでなく、都内経済全体をどう活性化していくのがよいのか、日本の国力アップのために、皆様と力を合わせて取り組んでいければ幸いです。

外国人起業家の資金調達支援事業 Q&A(東京都公式)